デジタル資料展「村上家文書の世界 ~近世×神戸×農村~」
(2021年10月公開)
今回のデジタル展示は、平成27(2015)年度に開催した資料展の内容を、WEB公開したものです。
当館を代表する郷土文書である「摂津国八部郡花熊村村上家文書」(「村上家文書」)にスポットを当てて紹介します。神戸といえば「みなとまち」のイメージが強いですが、近世の神戸には農村的な営みも行われてきました。また、神戸は海と山が近いため、海とともに山の恩恵も享受してきました。しかし、神戸市域の様相は慶応3(1867)年の神戸港開港により一変してしまい、近世以前の様子を示す遺物は多くありません。そのなかで近世の神戸の姿を書き記す村上家文書は貴重な歴史資料といえます。本資料展を通じて、近世神戸の一側面に触れていただければと存じます。
「村上家文書」とは
花熊村の庄屋を務めた村上家に残された文書です。大部分は昭和33(1958)年に当時の村上家当主である村上佳子氏から寄贈されたもので、現在社会科学系図書館に所蔵されています。総点数5,742 点で文禄3(1594)年から明治21(1888)年までの文書から成り、花熊村の村政に関わる史料を多く含んでいます。
花熊村は現在の神戸市中央区花隈町・北長狭通5丁目・下山手通と中山手通の各4~6丁目を領域とした村で、近隣の北野村・宇治野村・神戸村・二茶屋村・中宮村との六ヶ村で福原庄を構成し、水利、入会山の管理等を共同で行っていました。そのため、村上家文書には福原庄に関する史料も残されています。
1. 花熊村の様相
明細帳や宗門人別改帳など村政に関わる史料を通じ、村高や人口といった村の概要を紹介します。あわせて絵図・地図も展示して、当時の花熊村やその近隣地域の姿をご覧いただきます。
1-1 花熊村について
1-2 花熊城と花熊村
1-3 福徳寺と四宮神社
1-4 数字で見る花熊村
2. 花熊村の農業と産業
花熊村では裏作として菜種が作られていました。また、村の南隣の神戸村・二茶屋村が町場として栄えていたため、それに応じた産業が花熊村には展開していました。それらを当時の消費経済や労働状況とあわせて紹介します。
2-1 田畑の耕作
2-2 菜種の栽培
2-3 様々な稼ぎ
3. 水の利用-溜池と水車
急勾配の地形にある神戸市域において、溜池と水車は重要な水利事業でした。溜池の普請・利用や水車の利用を村の産業ともあわせて紹介します。
3-1 花熊村と溜池
3-2 花熊村と水車
4. 再度山大龍寺
六甲山地西部の再度山大龍寺は、福原庄六ヶ村の立会で維持されていました。そのため、村上家文書には大龍寺に関わる文書が多数含まれています。大龍寺の運営や看房(住持)の任免等に関する文書を紹介します。
4-1 大龍寺について
4-2 大龍寺看坊と福原庄の対立
神戸大学人文学研究科地域連携センターの協力により、附属図書館が所蔵する郷土文書類の目録を公開しています。WEB上での検索が可能です。
⇒ 神戸大学附属図書館デジタルアーカイブ「神戸大学附属図書館所蔵郷土文書類目録」
「村上家文書」について更に詳しく知りたい方は、ぜひこちらの解題をお読みください。
⇒ 摂津国八部郡花熊村村上家文書解題
この資料展の参考文献リストはこちら⇒ [PDF:104KB]