大壁画「青春」

大壁画「青春」
壁画の中央に、書庫に入る扉が組み込まれています。
大壁画「青春」(全体画像)

大壁画「青春」について

神戸大学附属図書館には日本有数の大壁画「青春」があります。洋画家中山正實画伯の手により1935(昭和10)年10月に制作されました。社会科学系図書館(国登録有形文化財)の2階正面に位置しており、その大きさは縦3.61m、横10.68m、まさに見る者を圧倒する大作です。

制作者の中山正實画伯(1898-1979年)は、神戸市に生まれ、神戸大学前身校の一つである神戸高等商業学校(後の神戸商業大学)を1919(大正8)年に卒業した後、1921(大正10)年23歳で早くも帝展に入選、1924(大正13)年にはパリのサロン・ドートンヌに入選という世界的快挙を果たした新進気鋭の洋画家でした。1932(昭和7)年、画伯34歳のとき、母校神戸商業大学の田崎愼治学長から、新図書館の壁画制作の依頼を受けます。画伯は一切の展覧会出品や美術団体等との関わりを断って画室に閉じ籠もり、ひたすら大壁画「青春」の制作に没頭。3年の歳月をかけて1935(昭和10)年10月にようやく完成となりました。

なお、1973(昭和48)年度に中山画伯により修復が行われ、画伯没後、2010(平成22)年度にも再度修復されています。

壁画「青春」画稿

下記画稿の複写はご遠慮戴いております。また、現物の閲覧も制限を設けている場合がありますのでご理解ください。
壁画「青春」画稿(全体)

「壁画青春画稿」について

大壁画「青春」の制作にあたって中山画伯は多くのデッサンを残し、それらは後年「壁画青春画稿」と題する長さ15.3mの巻物に仕立てられました。この画稿は中山画伯が壁画の構想を練る経緯を窺い知ることができる貴重な資料となっています。

なお、この画稿は、中山画伯と親交を結ばれた方から、広く公開してほしいと六甲台後援会に託されたものです(会誌「凌霜」392号(2012年2月号)22頁に経緯が記されています)。六甲台後援会と神戸大学附属図書館では、寄託者のご意志に沿うべく、「壁画青春画稿」を電子化しWeb上で公開させていただくことといたしました。

画稿は、最初に伊豆修禅寺第38世住職の丘球学老師の筆による「練想永輝」の揮毫(1940(昭和15)年)を掲げたあと、中山画伯の筆による「壁画青春画稿」の題字と「ひとりの人間の力ははかないものだ。然し、積み上げられてゆく一人の力は洞門を築く。永遠に残すべき記念碑の一つづつの石をつみ上げよう」を巻頭言(1933(昭和8)年揮毫)として、大壁画「青春」の各場面のデッサンが続きます。逞しくも優しげな若者たちの姿と、随所に添えられた言葉からは、中山画伯のどこまでも温かいお人柄と、壁画に懸けた熱い想いが伝わってくるようです。ご鑑賞の一助になれば幸いです。

「壁画『青春』画稿」の言葉

画稿は「練想永輝」という揮毫と、「ひとりの人間の力ははかないものだ。然し、積み上げられてゆく一人の力は洞門を築く。」という印象的な言葉で始まり、続いて、壁画の基になったと思われるデッサンが連なっています。
画稿の画像上にアノテーションの形でデッサンに添えられた言葉のいくつかをご紹介しています。