Wheeler, John著, 1601.
16世紀末、イギリスではチュドル王朝の中央集権が確立したが、王室の財政は100年戦争以後の戦費がかさんで苦境に陥っていた。このため、多額の関税収入が得られる商業・輸出業に目を向けるようになっていった。
当時、イギリスで輸出第1位を占めていた羊毛は、ステープル商人(個人商人団)がそのほとんどを独占していた。その後毛織物がにわかに発展し、毛織物の輸出税も国家にとって重要となってきたのだが、その毛織物輸出は、マーチャント・アドヴェンチュラース会社が独占していた。
ここで、海外貿易の組織形態として、「ステープル商人(個人商人団)」と「マーチャント・アドヴェンチュラース会社(会社組織)」のどちらが貿易業として適正か、という論争がわき起こった。時の税関吏トーマス・ミルス(Thomas Milles)は、“The customers apology”(1601)を著して、マーチャント・アドヴェンチュラース会社を非難し、自由貿易を主張した。本書は、これに反論して、マーチャント・アドヴェンチュラース会社の秘書であった著者が著したものである。ミルスとホイーラーの論争は華々しく繰り広げられたが、1604年、ミルスの自由貿易法案が議会で否決され、マーチャント・アドヴェンチュラース会社に軍配が上がる形で一件落着した。
(社会科学系図書館(5-3-1832) 登録番号38367 昭和3年4月19日受入)
参考文献 : 南 諭造 「古版経済書管見」(神戸商大新聞 昭和10年3月20日号)