菟絲子(ねなしかずら)


本書は、総合・国際文化学図書館に架蔵されている「郷土資料」と呼ばれる文献群に含まれている書籍です。和綴の全10巻で、手稿本です。本書の編著者は、巻之十の巻末の奥書により、河合武八郎宗臣という人物であることが明らかです。奥書によれば、同人が江戸時代の寛政の末頃以来書き集めてきたものを文化10年(1813)の12月17日に清書し終えたとあり、成立年代が明らかとなります。

本書編纂の趣旨は、巻之一の巻頭に掲げられている「凡例」に示されているように、「此書は、予年ころ他にかり得て見もし又ハ書写せし記録のうち、忠節・教諭・戦功の類ひ、又ハ詠哥等の優るゝ事とも其あらましを本書の序次に[(虫損)]かかわらず閑暇の折から心の趣くまゝにしるしけるな」りとあり、河合宗臣自身の著述ではなく、多くの古典的な文献からの抜き書きからなる編著物というべきものといえます。

編著者の河合宗臣については、「郷土資料」が、国際文化学部(旧教養学部)の前身のひとつである旧制姫路高校時代に収集された播磨を中心とする古文書などのコレクションが多くを占めていることや、その名前が姫路藩家老で藩政改革を進めた人物として知られる河合道臣(寸翁)と近似しており、その関連性が想定されることから姫路藩関係の人物である可能性もありますが、現時点では河合家の系図上で宗臣という名の人物が見あたらず、また本書の内容も必ずしも姫路もしくは播磨に関する内容というわけではないことから、姫路および播磨地域と本書との関係はなお検討を要するでしょう。
(木村修二 神戸大学大学院人文学研究科地域連携センター 2010年3月)

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