久宝寺屋文書解題
文書群
「久宝寺屋文書」は、河内国志紀郡市村新田(現大阪府柏原市上市周辺)の高田家の文書である。神戸大学附属社会科学系図書館の『図書受入原簿』によると、昭和34年(1959)3月20日に「小林秀雄」から購入したと記されている。「小林秀雄」とは大阪梅田の古書店・萬字屋書店の店主である。
「久宝寺屋文書」は計64 点。天保8 年(1837)から大正13年(1924)までの史料があり、特に明治期の史料が多く残されている。また、「久宝寺屋文書」には金銀出入帳や小作年貢帳などの帳簿が多く残されている。
史料紹介
田家について
高田家は、近世において久宝寺屋という屋号を持つ綿商家であった(№ 30-1・2など)。「久宝寺屋文書」は大部分が帳簿であるが、№ 30-1 の末尾には、決算に対する所見が書かれており、日露戦争後は好況であったが、明治39年(1906)4月上旬から不況となり損失が生じたこと、表倉庫建築や結婚・不幸・入営などの不慮の出費があったことが記されている。また、小作年貢帳(№ 18 など)からは、高田家が市村新田・安堂村・太平寺村・柏原村・高井田村(いずれも現柏原村)に田畑を持っていたことが読み取れる。
(2020年3月 神戸大学大学院人文学研究科 山本康司)