研究会・研修会のまとめ(兵庫県大学図書館協議会)

No.29 2000(平成12)年度企画委員会事業報告 2001.7

 ○ 企画委員会構成館

    国公立大学  神 戸 大 学(会長館)

             神戸商科大学  

    私立大学   関西学院大学(副会長館)

             英知大学

             流通科学大学

    短期大学   湊川女子短期大学


2000(平成12)年度講演会

 

    日  時: 平成12年11月 2日(木)

    場  所: 神戸大学六甲台本館 306号教室

    講  演: テーマ「図書館のパフォーマンス測定と顧客評価」

              図書館情報大学教授   永 田 治 樹

          テーマ「ゴットフリート『史的年代記』の流伝と影響」

              一 鎖国時代の歴史観を考える 一

              京都大学教授      松 田   清

 

    参 加 者: 27 大学・短期大学  67 名

 

*「図書館のパフォーマンス測定と顧客評価」  講師: 図書館情報大学教授 永田治樹氏(兵庫県大学図書館協議会講演会講演要旨から)
大学図書館も、他の図書館と同様、顧客コミュニティに支えられている。したがって、そのマネジメントは、大学という顧客コミュニティのあり方や、外的環境の変化(大学(院)改革、生涯学習社会の実現、情報技術の進展などに敏感に対応する必要がある。
大学は、高等教育と学術研究のための、公共組織(国公立)もしくは非営利組織(私立)である。この種の組織では、設置の際に掲げられた使命(目的)の正当性ゆえに、従来マネジメントのあり方が見過ごされがちであった。しかし、1980年代以降、この種の組織の効果や効率が議論されるようになり、可能な部分の民営化や、そのままの体制を続けるとしても、競争原理の導入などが標榜されるようになった。こうした新しい考え方として、ニュー・パブリック・マネジメント(NPM:New Public Management)がある。NPMにおいては、第1に現場裁量の拡大と成果評価の実施、第2に競争原理の導入、第3に顧客主義、第4に統制しやすい組織への改変、という4点が強調される。
ここでは、顧客主義に基づく成果評価をとりあげる。
成果詳価は今目、公共・非営利組織における、説明責任のためや、経営戦略の設定あるいは組織改善のための基盤データとして不可欠である。予算主義で展開する公共・非営利組織において、これが結果を問題とする事後評価だという点も重要である。また、顧客主義とは、利用者が顧客であると考える立場である。
図書館界におけるパフォーマンス測定の指標としてIFLA(国際図書館連盟)の”International Guidelines for Performance Measurement in Academic Libraries”(1996)がある。そこに示された16のパフォーマンス指標例は、有効性指標、成果指標、関係分析指標、コスト指標、アウトプット指標といったタイプに分類できる。これまで図書館では、把握しやすいアウトプット指標や有効性指標だけを見てきたが、この中で最も肝心な成果指標、つまりサービスが顧客に喜ばれているか否かという、サービスの品質評価を取り上げる必要がある。
80年代後半、A.Parasuraman V.A,Zeithaml.L.L.Berという3人の経営学者が、サービスの品質測定のために、SERVQUALという方法を発案した。サービスの品質は、顧客の判断に関わるものであり、顧客は期待以上であればサービスの品質が高いと感じ、期待に達しない場合は品質が低いと判断する、と彼らは考えた。また、顧客はサービスについて口コミなどによって期待を抱き、有形性・信頼性・応答性・保証性・共感性という5局面から、サービスのレベルを判断(認知)するという点を明らかにした。SERVQUALは、各局面に関する22の質問 (例えば有形性として、「最新の設備・機械を備えている」)に対する期待と、実際に利用した上での認知の程度を尋ね、両者の差を局面ごとまとめて(さらに5局面に対する重要性判断の重みづけをし)サービス品質を測定するものである。
SERVQUALは、多様な観点からサービス評価が可能であり、また簡易に実施できる、極めて有効な手法だ。しかし、図書館サービスの場合、私の調査経験から見ても5局面を補足する必要があると思う。現在、研究図書館協会(ARL:Association of Research Libraries)もSERVQUALの向上に努めており、開発中のLibQUALプロジェクトは、「サービスの効力」「場としての図書館」「物理的コレクションの供給」「情報へのアクセス」などの評価因子を摘出している。
SERVQALやLibQUALの調査により、図書館サービスの成果評価が得られる。このような顧客判断の意味を把握してサービスを改善することが重要であり、「お客さんが喜ぶサービスを」実現することが、図書館マネジメントにおいても基本である。

*「ゴットフリート『史的年代記』の流伝と影響」−鎖国時代の歴史観を考える−  講師:京都大学教授 松田清氏(兵庫県大学図書館協議会講演会講演要旨から)
ゴットフリートの『史的年代記』Gottfried.J.L.Historische.Chronica.Franckfurt.1636‐2634は、版画家マテウス・メリアンによる豊富な銅版挿し絵によって、天地創造から神聖ローマ帝国の当代皇帝までを編年体で叙述し、1743‐1759年版まで少くとも6版を重ね、オランダ語訳も初版(アムステルダム、1660)、第2版(ライデン、1698‐1700)、第3版(ライデン、1702)の3種を数えた。
幕府の禁教政策のため、現存する鎖国時代の舶載蘭書のなかで、聖書をはじめとするキリスト教関係図書は極めて稀である。『新約聖書』は大阪の蘭癖収集家山片重芳の旧蔵本が知られている。京都の蘭学者辻蘭室はオランダ語版のルター訳聖書(アムステルダム、1671)の標題紙を入手しているので、本体も舶載されたと思われる。松浦静山の旧蔵蘭書にへンリー『字義的・実践的聖書釈義』のオランダ語版(1741)があることはよく知られている。しかし、これらの資料の同時代的影響はほとんどなかったようである。
蘭学の勃興した18世紀後半に舶載され、通詞や蘭学者たちの目に触れた洋書は、語学書・博物書・医学書・理学書・百科事典の区別なく、すべてキリスト教的世界観にたって書かれており、そこから断片的なキリスト教知識を得ることは可能であったが、通詞や蘭学者たちの宗教的無関心または禁教政策への配慮、語学力不足のため、体系的知識には至らなかった。
蘭学時代のキリスト教理解に重要な役割を果たした蘭書は歴史書、とりわけ世界史の本であった。なぜなら、舶載され利用された世界史は聖書に基づいて書かれており、神による天地創造の物語から始められていたからである。これまでに確認された唯一の例外として、反教会的な植民主義批判の古典、レナール『両インド史』の蘭訳(1792‐1804)があげられる。これは伊達藩旧蔵蘭書の一つであり、その日蘭貿易の章はよく読み込まれているが、『両インド史』の実質的な著書ディドロの反植民地主義思想が無名の蘭学者によって理解された形跡はない。
聖書に基づかない近代的な世界史の嚆矢として知られるヴォルテール『諸国民の風俗と精神に関する試論』(1756)は、たしかにヴオルテール全集の普及とともにヨーロッパ中に流布したが、少年ゲーテが愛読した世界史は、ヴォルテールのこの記念碑的な文明史ではなく、聖書に基づくゴットフリートの『史的年代記』であった(『詩と真実』による)。
ヴォルテールの『諸国民の風俗と精神に関する試論』は、ボシュエ『世界史論』(1681)を批判的に継承し、聖書に代わって風土と統治形態と国民精神の3原理によって、シャルルマーニュからルイ13世時代までを扱つている。一方、『世界史論』はフランス国王ルイ14世の皇太子の教育係であったボシュ工が皇太子の帝王学教科書として著したもので、聖書に基づく世界史として、天地創造からシャルルマーニュまでを12の時代区分に分けている。また、当初の計画では第2部としてシャルルマーニユから当代のルイ14世までを叙述し、フランスをキリスト教的ヨーロッパの正統な継承者として位置づける意図を持っていた。
これに対し、ゴットフリート『史的年代記』は同様に天地創造から始めているが、ボシュ工の典雅な古典的文体とは対照的に、バビロニア、ペルシア、ギリシア、ローマの古代史をまさにバロック的に、豊富な逸話や伝記を盛り込みながら叙述し、神聖ローマ帝国の正統性を強調している。この聖書に基づいて書かれている世界史ゴットフリ一ト『史的年代記』は、鎖国時代の日本に舶載され、おおいに利用され、多くの影響を与えた。

2000(平成12)年度見学会

 

    日 時: 平成12年 9月28日(木)

    見学館: 宝塚造形芸術大学図書館(宝塚市花屋敷つつじガ丘7一27)

    参加者: 22 大学・短期大学  35 名


2000(平成12)年度研修会

 

 ○ 平成12年度目録システム地域講習会(図書コース)

 

   平成12年度、国立情報学研究所と神戸大学の共催で目録システム地域講習会を開催し、

  前年同様、兵庫県大学図書館協議会の研修事業の一つとして実施した。

 

    日 時: 平成12年 6月27日(火)〜29日(木)

    場 所: 神戸大学附属図書館 自然科学系図書館

    講 師: 神戸大学図書館職員7名

    受講者:  6機関  9名

    カリキュラム:

      第1日目(6月27日)

        開講式、目録システム概論・基準、端末操作実習

        目録検索総論・検索技法、検索実習

      第2日目(6月28日)

        登録総論、登録実習1(所蔵・階層なし)

        登録実習2(階層あり)、登録実習3(物理単位)

      第3日目(6月29日)

        登録実習3(物理単位)、登録実習4(修正・新規入力)

        補講・自由演習、まとめ、閉講式


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